はねよら様より

All Fiction の はねよら様より、素敵なホアクレの物語をいただきました!
リクエストしていいですよって言ってもらえたのをいいことに甘えまくって
由多が1000%読みたいものをお願いして書いていただきました…!!
以前ブログで飾らせていただいていたのをサイトにも飾らせていただきます♪

リクエストの内容は
「 ホアサラ で キッチンで一緒にお料理するお話 (R15) 」 です!^^^^

やんわり大人表現ありを自ら希望したので一応ワンクッション(だって読みたかったんだもん笑
自己責任で ですけどぜひお読みください~~!






-----------------


ごちそう
 

「ホアンさん!あの、お願いがあるんですけど!」
「…?どうしたね、サラさん」
「私に料理のコツを教えてください!」
帰宅して早々リュックも下ろさないまま、サラさんはわたしに頭をびゃっと下げてきた。
走って帰ってきたのか少し息が上がっていて、室内の温度で溶け始めた雪がリュックにじわりと染みこんでいく。
頬に手を添えて頭を上げさせると、鼻の頭が赤くなってた。その鼻をぎゅむ、とつまむとサラさんの眉がぐにゃりと不服そうに歪むのが面白くて、思わず笑みが零れる。
「ふふ、外、寒かたね」
「ひゃい」
ひんやりした丸っこい頬を両手で包んで暖めた。は、は、と息をしていた肩がだんだん落ち着いてきたのを見計らってそっと額にキスをした。
「おかえり、サラさん」
「…ただいま、ホアンさん」
いつも全力で出来ることは全部頑張って、一生懸命なところが愛らしい。それはもう、だいたい彼女の行動の中で突飛じゃなかったものの方が少ないのでは、と思えるほど。
キスが恥ずかしかったのか、帰宅後の挨拶も忘れて本題を切り出したことを恥じているのか。寒さとは別の赤みがやんわり指している頬を横目で見ながら、細い肩をとんとん、と指で叩いてサラさんがリュックを下ろすのを待った。
「料理のコツて言ってたね?」
「…はい。今日教えてもらったレシピがあって…でもちょっと自信がないので…ホアンさんにアドバイスもらえたらなって」
リュックを下ろしたついでに、かさりと手のひらサイズの小さなメモ用紙が取り出される。
正直なところ、サラさんは自分では料理が得意じゃないと思っているようだけど、わたしから見ると気になるほどではない。彼女なりのできることを尽くしてくれる気持ちが何よりも嬉しいから、本音を言ってしまえば今のままでも別にいい。
けれど、サラさん自身が現状を変えたいと思っているのであれば、それを断る道理はないし、頑張る彼女を見るのも好きだ。頼られるのも悪くない。
「いいよ!お代は後払いね」
「えっ!お金取るんですかっ?」
「料理教室代ね、代価なしに得られるものはないある」
料理一品につき単価設定してみようか、と頭を巡らせてみたところでサラさんがだんだん俯きがちになっていく。そういえば冬は収入が減少するんだと昨日しょぼくれていたのを思い出した。
「…ど、どうしても…?」
ぴょこんと跳ねたてっぺん付近の毛がしょぼんとへこたれた。払わなきゃだめですか…、と消え入りそうな声で上目遣いをされるとどうも弱い。せっかくのビジネスチャンスを逃すとは。しょうがないサラさんね、と口に出しそうになったのを慌てて飲み込む。しょうがないのはどうしようもなく彼女に弱いこの自分だ。ため息をひとつ吐いて羽織を脱ぎ、腕をまくりながらぽそりと呟いた。
「…無償だとサービスの質が落ちるし邪魔も入るある」
「そ、それでもいいです!えと、助言だけでもいいですから!」
「……今回だけね」
「やった!ありがとうございます!」
ぱあっと花が咲くように嬉しそうな笑みを浮かべて、サラさんはうきうきしながらエプロンを取りに行ってしまう。惚れた弱みと言われればそれまでだが、今この瞬間は行商人としてではなく旦那さんとして、奥さんのスキルアップを見守ることにした。
「で、何作るあるか?」
エプロンを着込んで髪の毛もきっちりひとつに束ねたサラさんは、体の前で両手をぐっと握り、おねがいします、と律儀に頭を下げる。
「えっと、生姜焼きです」
「ふーん?」
キッチンに置かれたメモをちらりと見ると、そこにあったのはどう見てもサラさんのものではない、癖と若干の年齢を感じる細くて流暢な字。そういえば今日は土曜、図書館横の家で行われている毎週恒例の料理教室だったか。
人妻だらけの会に若いサラさんが入るのは違和感があるなと思ったところでふと気付く。
サラさんも人妻だたね。わたしの。
「ご飯炊くとか、付け合わせ作るとかは一人でできると思います!」
「分かったある。じゃあ助けが必要になるまで見てるね」
タマネギたっぷり入れてみますっ!と意気込みながらメモをぴぴっと指差す彼女の頭をひと撫でして、ダイニングテーブルの方へ向かった。
生姜焼きであれば難易度の高い料理ではないし、作り方があるならそれを見ながら作れば形にはなると思う。…が、サラさんはどうもちょっと抜けているところがある。料理中に別のことを考えていて焦がしたり、味見をしなかったり。そういう本当にちょっとしたところ。それが彼女のいいところと言えばそうなので、敢えて指摘するほどのものではない。
集中している横顔を見ていると、時折眉間にぐっと皺が寄ったり、唇がむにりと尖ったりとまるで百面相だった。ころころ変わる表情も、体の動きに合わせて束ねた髪がふわふわ揺らめくのも、髪色に似た淡い色のまつげがぱちぱち、と瞬くのも、いつまで見ていても飽きない。いつもならこれくらい見つめ続けていると「見過ぎですっ!」と顔を赤くして怒り始めるはずなのに、そんなこともなく集中して手元を凝視している。
こうしてじっと見てみて改めて感じるのは、手際が悪いわけではないということ。むしろどちらかというと要領はいい方だと思う。一番最初にお米を炊くのは効率がいいし、付け合わせのサラダを作るのもてきぱきと動いている。物があふれる前に使った器具を片付けたり、新しい材料を取り出したり盛る器を用意して場所を確保したり。そういうことは十分すぎるほどきちんとできている。できているが、気合いが入りすぎてちょっと力みすぎているような気もする。
「サラさん」
そっと立ち上がったつもりだったけれど椅子がかたりと音を立てた。
「は、はいっ」
ちょうどタマネギを切る直前だったサラさんがぱっと顔を上げてこちらを見た。驚いたような顔をされたので、とりあえずニコリと微笑んで助言する。
「切り方のコツ、教えるある」
ダイニングからキッチンに向かって、サラさんの真後ろに立った。抱き締めるように両手を回して、包丁を握る小さな手に自分の手を重ねる。かなり力が入っているようだったので、親指で手の甲の筋をすりりと撫でた。
「…力抜くね」
「っ!」
ぽそりと声をかけると、サラさんの肩がびくりと跳ねた。
声が耳に直撃してしまったらしい。わざとではない。わざとではないが、掠めてしまったものは仕方ない。第一こうしないと包丁の使い方は教えられないし、事前に邪魔が入ると忠告はしたので知らんふりをすることにした。
「サラさん、ほら。力むと上手くできないある」
「…っ」
言い聞かせるように声をかけて、サラさんの手ごと包丁を握った。体を密着させるとふわりといい匂いがした。暖かみがあって柔らかな、落ち着く匂い。
「真下に押しつけるんじゃなくて、こう」
「……う」
く、と包丁を傾け軽い力で押して、タマネギをしゃくりと切る。髪の毛を全てまとめてしまっているから普段よりわたしの声がダイレクトに響いて辛いだろうに、それでも手放すことなく懸命に切ろうとしているのがなんともいじらしい。
「そう、奥に押し込むね」
「……はぃ、」
喋るたびに目の前の小さな体が僅かに動揺し、返事しようとする声にも隠しきれない吐息が混じった。
「そうそう、上手よ」
「……っ」
そんな中でも促せばきちんと幅を揃えて切れているし、力みすぎて鋸のように使う素振りもない。耳を刺激しないようにできる限り囁き声で褒めてみても、サラさんは体をぴくぴくと小さく震わせてしまう。どうにか耐えようとだんだん力んできてしまっている手を、重ねた指でまた優しく撫でた。
「うん、全部綺麗に切れてるね」
「は、はい…」
「…かたいものは押して、柔らかいものは引く、て覚えるといいある」
「……っ」
「慣れれば自然にできるように…、ん?」
ことり、と包丁を置くと、結んだ髪の毛が緩んで一束はらりと落ちてきた。
俯いたままのサラさんはまるで気付いていないようで、目をきゅっと瞑り、耳からじわりと浸食しつつある快感を逃そうと小さく深呼吸をしている。
途端にむくりと湧き上がった悪戯心。落ちてきた髪を手に取って、そっと耳にかけた。そのついでに耳の周りをなぞるようにわざとらしく指で辿る。
「ひゃっ…?!」
サラさんは目を大きく見開いて、びくりと体を大きく震わせた。ばっとこちらを振り返った瞳とばちり、視線が交差する。眉をつり上げ、真っ赤な顔で何かを言いたそうに口をぱくぱくさせているのを見て先手を打つことにした。
「髪の毛、きれいだけど料理に入ったら大変ね」
「うぅ…」
「うん?他意はないよ」
嘘だ。思いっきり他意はある。
ただわたしが「他意はない」と言うと、サラさんはそれがいくら不服でも頑張って飲み込もうとする。"絶対違うと思うけど、ホアンさんがそう言うなら"と。たまに自分を偽るようにして揶揄いたくなるのはわたしの悪い我が儘で、それを許してくれるサラさんの優しさに甘えている。
「サラさん、大丈夫あるか?」
「い、いまは、料理中、ですから…っ」
しらを切ってわざとらしく聞くと、サラさんは耳を真っ赤にしたまま食材に向き直った。
「その通りね、ほら続きするある」
楽しくなってきた。いつもなら羽織の袖で口元を隠すところだが、今日は覆えるものがない。ただ幸運なことに当のサラさんはこちらを向いていない。にやけてしまう口角はそのままに、むき出しのうなじにちゅ、と吸い付いた。色白で柔らかな肌を唇で食んでわざと音を立てると、サラさんの肩がびゃっと上がった。
「!ホ、ホアンさんっ!」
「あいや、これは生徒さんへの労いね」
「う、ぅ~…」
ぐぬぬ、と言わんばかりのサラさんに、両手を挙げて何もしてないアピールをする。何もしてないわけないのに、彼女はとことんわたしに甘い。
「ほらほら、炒め物は油を熱するのが肝心ある」
「は、はいっ」
フライパンをコンロに置いて催促すると、サラさんはぱっと気持ちを切り替えて油を手に取った。心とは裏腹に体は正直なようで、耳も首元もまだほんのり赤みを帯びたまま。
「鍋たくさん振る、握力いるね」
「んと、こう…?」
「利き手が右なら左で持つよ」
「ひだり…」
今日のサラさんはほんとうに頑張りさんね。
小麦粉を軽くはたいた肉をフライパンに乗せると、じゅわりと食欲をそそる大きな音が響いた。火の通り具合を見ながら切ったタマネギも入れる。炒まる具材の音に合わせて、サラさんは懸命にフライパンを揺らしていて、それを見ていると唐突に、目の前で懸命に料理をする姿がたまらなく愛おしくなった。正直なところ食欲とは別の欲も刺激されているが、この状況をもう少し楽しみたい気持ちもある。
「こう、傾けると楽ね」
「は、はいっ!」
とはいえさすがに火元は危ない。つかず離れず、後ろから抱き締める幸福感を味わいながら、決して触れないけれど確実に耳を狙って助言を届けた。
肉とタマネギに火を通して、メモの分量通りに味付けをする。時折目分量でいこうとするサラさんをやんわり制止しつつ、今回はどうにかきっちり量って完成させた。
「…できましたっ!」
「うん、上手にできてるある」
かちりとコンロの火を止めて、サラさんは肩を撫で下ろす。
素直な感想を伝え、頭を撫でながらこめかみにキスをした。髪をまとめているといつもより触り心地が違う。
食べるの楽しみある、と声をかけて炊飯器を開けた。ほかほかに炊き上がっているご飯を茶碗に盛り付けてダイニングに運ぶ。あらかじめ置いておいたグラスに麦茶をとぽぽ、と注ぐと、サラさんが作りたての生姜焼きを盛った器をことりと真ん中に置いた。エプロンの紐をするりと解きながら、彼女はむっとした声を上げる。
「…教えてくれたのは嬉しかったですけどっ」
「うん?」
お茶を注いだグラスをサラさんに手渡して、向かい合って腰掛けた。
「も、もう!耳とか!絶対わざとですよね?!」
「無償だと質も落ちるし邪魔も入る、最初に言った通りね?」
当たり前のことのように呟くと、みるみるその頬が膨らんでいく。
「い、いじわる…!」
「ふふ、食べるの楽しみね~」
いただきます、と両手を合わせて微笑むと、サラさんはまだちょっと不服そうな顔をしながらも同じように手を合わせた。
「ご馳走様。すごく美味しかたね」
「えへへ、いっぱい食べてくれて嬉しいです!」
目を閉じて手を合わせた。サラさんもぺろりと平らげて、機嫌が直りましたと言わんばかりの満面の笑みを見せる。
さて片付けるかと椅子から立ち上がり、使った食器やグラスをキッチンへと運んだ。サラさんも同じように自分で食べた食器を持ち、わたしの後に続く。
上手く切れたし、焦がさなくてよかった、とぽつぽつと嬉しそうに零すのが可愛くて、ちょっとちょっかいをかけ過ぎてしまったことを反省しながらこの後の算段を立てた。
「サラさん」
「?なんですか?」
シンクに洗い物を置いて名前を呼んだ。首を僅かに傾げてやや下から見つめられるとやはり、満たされた食欲とは別の欲がむずむずと掻き立てられてしまう。
彼女が手にしていた分の食器も預かってシンクに置き、無防備になった体をそのままぎゅうっと抱き締めた。
「わっ」
後ろ手で括っていた髪留めを外すと、ぱさりといつもの金色が目の前に広がる。ふわふわの触り心地のそれを撫で、髪に顔を埋めるように慈しんでそっとキスをした。
「お腹すいたね」
「えっ」
髪を撫でる片手は止めないまま、できる限り平静を装って言葉を紡ぐ。
「ぺこぺこある」
「え、あ、少なかったですか?」
体を少し離して頬に両手を添えた。わたしの手にはあまりに小さいそれは、指が余って耳や首の方まで届いてしまう。両手の親指で頬骨を辿るようになぞり、髪に隠れた耳を人差し指で探り当てた。
「…あっ!、…ふ、…っ」
またびくりと震えた肩は無視をして、容赦なく顔を近づける。
唇が触れあうまであと1センチの距離で止まって、潤んだその瞳をじっと見つめて呟いた。
「おねだり、ね」
「!」
正直なところそろそろ我慢の限界だった。驚いたように半開きになった口に唇を重ねる。耳を指で擽りながら、柔らかくて薄い唇を食むようにちゅ、ちゅ、と啄んだ。
「サラさんが食べたいある」
「ん、…んっ、ぅ」
細い腰に手を回して下半身を密着させる。思ったより自分の声が掠れているのに内心苦笑しながら、囁くように言葉を続けた。
「…お腹いっぱいになるまで」
「ぁ、ほ…ほあんさん…」
サラさんは恥ずかしそうに顔を赤らめ、じわりと涙が滲んだ視線がうるうると俯きがちに彷徨っている。可愛。ただひらすらにそれしか思えない。もっと欲しい。
お互い、特にわたしのスイッチはとっくに入っている。感じ入ったようにぴくぴくと体を震わせながら私の上着をきゅ、と掴むその仕草にすら征服欲が刺激された。
「…ぇ、えと…その…め、めしあがれ…?」
サラさんはわたしの手をとって、彼女の胸の上に押しつけるようにして呟いた。服の上からでも分かる柔らかさと暖かさ、そして何より鼓動が伝わってくるのがあまりにもリアルで、くらりと目眩がしそうになる。一瞬途切れかけた理性を全力で押さえつけた。何をどうしたらこんなに煽り上手になるものなのか。否、これが素なのが恐ろしい。
「じゃあ遠慮なくいただくね」
いつも通りの笑顔を必死で取り繕って、再びぎゅっと抱き締めた。文字通り遠慮無くかぷりとその耳を食みながら、小さく喘ぐ声を耳で楽しむ。
満腹になるまで明日の大雪が続きますようにと心の中でひとり祈りながら、おそらく長くなるであろうこの夜に思いを馳せた。


-----------------

最っっっ高です
自分以外が紡ぐホアサラの物語、しかもはねよらさんによる大人スパイス
わがまま放題なリクエストでごめんなさい、でも読みたかったんです、そして耳攻めありがとうございます、人生に悔いなし

小説はとくに読み手によって感じ方が変わるのでここで感想を多くは語れないのですが、、
リクエスト内容からここまでホアサラ感出せるはねよらさんまじで天才と思いました…!

ホアクレ好きさんからホアクレ作品いただけるのほんとめちゃめちゃ嬉しい&幸せです…!
この幸福感を胸に、これからも精進してホアクレたくさん愛でようと思いますvV

はねよらさん書いていただきありがとうございました!大切にします!

ーーーーーーーーーー

あげたらキリないくらい萌えがいっぱいはねよらさんのホアサラSS!
どうだいいだろう~vV許されるならこれでマンガいつか描きたいほんとに……




2022/12/03 up
inserted by FC2 system