行商人と常連さん
主人公がまだ恋を自覚してない頃のお話。買い物の最中、めずらしやホアンさん視点です。
SSもどきですが由多に文才はない、
でも読んでくれたなら大海原のように心の広い方に違いない
「よく見たらホアンさんのサングラス、少し変わってますね」
そんなことをいいながら、身体をかがめて物珍しそうにこちらの顔をじっとのぞく。
「あいや、珍しいあるか?
行商を始めた頃に手に入れたものね。でも売り物じゃないある。
珍しいのが好きならフリスビー買うか?仕入れたばかりあるよ」
まだ犬を飼ってはいないと知りながら、冗談めかしていったのだが、返事がない。
そういえば、この常連さんは集中するとまわりが見えなくなるのだった。
「サラさん」
名前を呼んでみても、無垢な子どものような表情は変わらない。
いつだったかは距離が近すぎると騒いでいたのに、こういう時の彼女はいつも無防備だ。
(ーおかしな人ね)
かがんだ反動か、後からはらりと、長い髪が垂れてきた。
彼女の金色の髪は窓からの日差しを浴びて、きらきらとオリハルコンのように眩くのだが
今日はその眩しさよりも先に頬をくすぐる感覚の方が気になった。
(…なるほど。思ったより、ずっと柔らかいある)
あと、数秒といったところだろうか。
自分の髪がいたずらしていることにも、
さっきからサングラスごしに、わたしが彼女の青い瞳を見つめ返していることにも、
きっと気づいたら気づいたで真っ赤な顔をしてわたわたと慌てふためくのだろう。
(さて、どっちに気づくあるか)
サラさんが我に返るまで、小さな賭けでも楽しむことにしよう。
2021/01/23 up