約束破ってごめんなさい!





ザクさんはお出かけ中のザクさんの家にて。
夫婦ゲンカはつきものです、なSSもどき。

由多に文才はありませんがそれでも読んでくださる方がいたら
初回購入サービスのごとくとびきりの優しさをサービスしてくれた方に違いない。



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波の音はおだやかだというに、ザクさんの家はとても不穏だ。
なぜなら私のヒミツが、たった今ホアンさんにバレてしまったからだ。


「サラさん?この間約束したね。通販つかうならわたしに教えるって」

「えと、違うんです、買ったこと忘れちゃってただけで、黙ってたわけじゃ」


『商人という職業柄、自分を差し置いて他所の通販を利用されるのはいい気がしない』
わざわざ夫婦の話し合い時間まで設けて、ホアンさんが教えてくれた、されると嫌なこと。
でもいつもの癖でついやってしまったのだ。つい。ほんとうについ。
通販したことはじつはバッチリ覚えていたしどう説明しようかとも思っていたのだけれど。

(ああ、目が笑ってない…これは怒ってるやつ…)

ドラマで見たことのある壁ドンというものを、まさかこんな形で受けることになるとは。
ドキドキして目が合わせられない。別の意味でだけど。


「それに何ね、『1週間でマイナス3キロ』?」


机代わりにしているダンボールの上に積まれた、同じくらい大きなダンボール。
そのダンボールに表記されている説明を読み上げられて、わああと大声が出てしまった。


「よ、読まないでくださいっ!もうすぐ夏だしと思って…!」

「にしては、余計なものたくさん入ってるね。
サプリメントにCD、肝心のダイエットグッズは箱の絵とまるで違う」


そう、こんな早く届いた(でも手違いでザクさんの家)ことにもびっくりしたし、
箱の中身にもびっくりした。
ホアンさんの目の前にいなければ思ってたのとちがう!!と叫んでいたであろう内容だった。
弁明するための言葉を考えているところに、またホアンさんが責め立てる。


「約束破るからこうなるねサラさん」


相次ぐ非難に耐え切れず、とうとう私もムキになった。


「っだって放送後30分は特別価格で同じものをおまけに
もう1つつけてくれるんですよ!?とってもお買い得だったから!」

「よく考えるねサラさん、同じもの2つ、でもサラさんは1人、必要あるね?」

「ホアンさんが使えばいいじゃないですか!!」

「わたしにそんなものどうしろというね」


言い返せたのはそのぐらいで、すぐさま正論で切り返される。
声を荒げて乱れた呼吸を整えたら、もう素直に謝ろう。


「ごめんなさい…あの、これは返品、」

「当たり前ね。クーリングオフ制度ある、わたしが手続きするいいね?」


ホアンさんは言うなり電話番号を入力しはじめた。


「うう、はい、お願いします…」


私は壁ドンされたまま、静かに注文をキャンセルされるのを待った。




電話を切った後、ホアンさんがため息をついた。


「身内がこんな手に引っかかるなんてね」

「…」


私が俯いていると、ホアンさんが顔を覗き込む。


「なんで泣きそうね?」

「ダメな奥さんって、思いました…?」


買い物も失敗して約束も破って、ホアンさんの嫌なことばかりしてしまって。
自分の愚行を思い返して、じわじわ涙がでてきてしまう。ああ、私はなんてダメなー、


「素直になんでも受け入れるのは、サラさんのダメなところでいいところね。
ダメなことしたら怒る、でもサラさんはわたしの大事な奥さん、それは変わらないよ」

「!っホアンさん…!」


ホアンさんの言葉に、ぱっと顔をあげる。
するとそこにあるのは鼻先まで近づいたホアンさんの顔で。


「ああでもそうね。相応の慰謝料と手間賃は―いただくね?」


そしてその場でお支払いしたのだった。




2022/04/16 up
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